スーパーバイク
「技術競争の激しいスーパーバイクでは、成功に酔いしれたり、他の成功を傍観したり、祝ったりしている時間は無い。」(マッシモボルディ)
ドゥカティは最初の世界選手権獲得からワールドスーパーバイクを支配し続けながら、この事を十分に理解しています。
最初の851SuperBikeを生み出して以来、ドゥカティ(現在のドゥカティコルセ)のエンジニア達は4バルブデスモエンジンと、スーパーバイク市販モデルのテクノロジーと性能の全てに関しての継続的な開発を推し進めてきました。
これらの努力は、最も有名な市販車両での世界選手権を、ドゥカティが制覇する事を許してきました。
4バルブデスモエンジンの継続的な進化は、非常に長期にわたり、このプロジェクトの優れた機械工学と製造技術の質の高さを証明し、ドゥカティの現在の技術と商業的成功の基盤として正しく反映されています。
ワールドスーパーバイクレースで無敵の4バルブデスモエンジンに、ライバル達が肉薄し始めたときから、ドゥカティのエンジニアは、結果として完全に新しいエンジンに、広範囲な改良についての新たなプロジェクトに着手しました。
このプロジェクトはドゥカティ2気筒に伝統的な90°Lの配置を保ち、新たな性能の可能性を切り開く、全面的に変更された熱効率を特徴としたエンジンと、996Rの創造をもたらしました。
2001モデルイヤーにおいては,996Rは500台が限定モデルとして生産される予定です。
このモーターサイクルは間違いなくスーパーバイクシリーズのトップエンドモデルであり、特別なマシーンを所有する事に意義を感じるスポーツライディング・エンスージャストに向けられたものです。996Rは、実際もうひとつの高性能スーパーバイクモデル、2000モデルイヤーの748Rを生み出した同じコンセプトの系統にあります。
レンジ
996Rの出現はドゥカティ・スーパーバイク・トップエンドモデルの性能を前例のないほどのレベルに引き上げ、大変革をもたらしました。996Rは、前モデルの996SPSに大して10%増のパワーを発生し、それは10200rpm時に135psに達します。
996Rは、ロードバージョン(最も厳しい認定基準を取得した)と上級モデルのレーシングバージョンの双方で、そのパワーポテンシャルの全ての面においての効率が驚異的なエンジンに基づいて開発されました。
ドゥカティ996Rは、かなりスリムダウンしたデザインと広範囲にわたる風洞実験によって開発されたすばらしい流線型のカーボンフェアリングを特徴とする非常にハイテクな構成部品を使用しています。
ドゥカティ996Rは、スーパーバイクの本質を具現化し、エンスージャストとプロフェッショナルライダーに対して等しく、ライディングする無類の喜びを与える事を意図したユニークなモーターサイクルです。
特徴と命題
*スタイリングと仕上げ: サイドエアアウトレット無しの空気抵抗を低減したカーボンファイバーフェアリング
*エンジンとテクノロジー: 砂型鋳造のクランクケース、新しいボア/ストローク、コンパクトな形状の燃焼室、狭いバルブ挟み角、ストレートな吸気マニホールド、コンパクトなCPU、スティックイグニッションコイル
*車体: フォガティレプリカフレーム、Ohlins製チタンコートφ43mm倒立フォーク、Ohlins製レーシングリアショックアブソーバー、Ohlins製ステリングダンパー
*安全性: Brembo製4ピストン4パッドキャリパー・レーシングタイプ・軽量ブレーキシステム
エンジンとテクノロジー
モーターサイクルレーシングの歴史の中でドゥカティ4バルブデスモ2気筒エンジンほど長い間スーパーバイク世界選手権のリーダーとしてレーシングシーンをその最初の段階から支配したエンジンはかつてありませんでした。
優れたエンジニアリングのプロジェクトは、また専門知識と技術能力を持つ偉大な競合者に対するドゥカティの優位性を確保するために、新たな、高い出力レベルに達するために絶え間ない開発と技術的強化を経てきたのです。
996レーシングがスーパーバイク世界選手権をまだ支配している時、ドゥカティの技術者が新しいエンジンのプロジェクトに着手する事をすばやく決断したのは、疑いなく将来に照準を合わせているからでした。
このプロジェクトは、伝統的なデスモ4バルブの外観と構造に最先端のテクノロジーと熱力学のコンセプトを結び付け、ロードモデルについてさえも性能に関して大きな飛躍を作り出したバイクとして996Rに結実しました。
その伝統的な構造と外観にも関わらず、996Rはまったく新設計のエンジンで、最初に砂型鋳造のクランクケースで500基が限定で製造されます。
外観上新しいクランクケースは、従来の996系と比較して新設計の深いオイルサンプとシリンダーヘッド外側のオイルラインのレイアウトが異なっています。
内部は、ボア/ストロークが従来よりもさらに高い回転数を可能とする、さらにアグレッシブな比率でそれぞれ98mmから100mm、66mmから63.5mmに変更されています。最も革新的な要素は、タイミングシステム構成部品の配置の見直しによってコンパクトな形状を持った燃焼室です。バルブアングルは、挟角が従来の40°から25°に変更されています。
排気バルブは変わらずφ33mmのままですが吸気バルブはφ38mmからφ40mmに拡大されています。
吸気と排気のポートの配置は設計しなおされ、直線的な形状を備えています。
996R用に開発された新しいヘッドは、ロードバージョンのエンジン出力:135ps(100kw)/10.200rpmによって立証されたように熱効率と容積の増大を確かなものとしています。
2000年の996SPSと比べて2001年の996Rは、200rpm低い回転数で13ps多い出力を発生します。トルクカーブは最高トルク値は変わらないものの、さらに整然としたプログレッシブなものとなっています。しかしそれが全てではありません。
燃料供給システムは、小さく軽く複雑な配線を必要としない超小型、超軽量、最新世代の5.9M CPU、MARELLI製の統合ディジタルシステムによって作動します。このCPUは従来モデルに比べて増大した演算能力と、冷却ファンのコントロールのような付加機能も持っています。
インジェクションシステムは748Rのものと酷似しており普通F1に使用される中心に「シャワー」(トップフィールド)タイプのシングルインジェクターで構成されています。
イグニッションシステムには、スパークプラグの真上に配置されたスティックコイルが使用されています。
さらに意義ある出力アドバンテージは、驚異的な加速力と終わりがないように感じられる出力カーブを結び付けています。996Rはまた前モデルに比べ著しく静かに作動します。これはエンスージャストにも受け入れられるもうひとつの美点です。
性能
996Rは、現時点において4バルブデスモエンジンに施された最もラジカルな改良過程の結果です。このエンジンはドゥカティスーパーバイクレンジのトップモデルとしてのレベルを越える進歩と出力レベルを提供します。
996Rは最高速度だけでなく、加速力、ピックアップ能力、さらにハイテクな構成部品の増大によって信じ難いほどスリムダウンされた車体構成で、高性能マシーンの非常に小さいマーケットにおいて独自な地位を開拓します
996Rは最大の容積と熱効率を得るため、最良のデスモドロミックタイミングシステムに1気筒あたり4バルブの吸気システムを組み合わせています。
これは機械工学を流体力学分野における綿密な研究作業の結果であり、完全に設計しなおされたタイミングシステムと新しい高効率の燃焼室形状をもたらしました。
車体
全てのドゥカティスーパーバイクモデルのフレームは、新しく直径10mmから12mmに拡大されたエンジンマウントリンケージと関連するエンジンアタッチメントを備えています。結果としてエンジンはフレームの剛性構造の一部となって、荷重を受け持ちフレームに対してさらに強固に一体となって全ての安定性と正確でダイナミックなシャーシーレスポンスに貢献しています。
改良された構造と構成部品に関して996Rのフレームはレーシングマシーンのクオリティにあるといえます。
フレームは、フォガティレプリカタイプの構造で2mm厚のクロモリ鋼管で製作され、シートサブフレームはもちろんアルミニウム製です。
フロントエンドにはフリクションを低減するチタニウムコートの施されたφ43mmの倒立フォーク、そしてフルアジャスタブルのリアモノショック、専用のOhlins製レーシングサスペンションが使用されています。
5本スポークのホイールは、ドゥカティのファクトリーチームが採用しているものと同じです
このモデルで、フレームは対重量比において卓越したねじり剛性を示し、驚異的なハンドリングを達成するキーファクターとして、ドゥカティのスーパーバイクをサーキットでも公道でも乗りやすくさせています
キャスターアングルが調整可能なステアリングヘッドは、ライダー個人の嗜好に合わせて最良のハンドリングレスポンスを約束するドゥカティスーパーバイク独自の優れた機能です。そしてOhlins製ステアリングダンパーがフロントエンドを締めくくります。
このモデルに施された改良作業は著しい重量削減をもたらし、結果として前後のアクスルへの重量配分を向上させました。アルミニウムのオーバルサイレンサーは最良の重量バランスに寄与しています。
安全性
2000年モデルから全てのドゥカティスーパーバイクモデルには、スタンドを出したときのロック機構と、サイドスタンドを完全に収納しないとエンジンが始動しないよう、始動防止センサーが装着されています。
新しい996RにはBrembo製レーシングブレーキシステムが使われています。ディスクはより薄いスティールブレーキローター(5mmから4mm厚)と、軽合金インナーローターとブレーキローターを接続する少ない数のフローティングファスナー(9個)によって軽量化されています。
重量は各フロントディスク約400gが前述のように削減されバネした重量であるため著しいアドバンテージとなっています
キャリパーは新型で摩擦材の磨耗コントロールの向上とブレーキリリース時のロールバックを抑えるため四つのφ34mmのピストンと四つのパッドを備えています。
エルゴノミクス
何よりもまずドゥカティスーパーバイクシリーズは、スポーツモーターサイクルのコンセプトとエッセンスを具現化したものです。
結果としてスーパーバイクモデルのエルゴノミクスは、公道とサーキットでこのタイプのモデルを使用する観点においてパーフェクトとなっています。
絶え間ない改良作業はドゥカティスーパーバイクのシートポジション、ハンドルバー、フットレストの配置に完全なバランスを与えています。これは結果として、究極のスポーツライディングに通常結びつくストレスを避け脚の筋肉を必要以上に緊張させない、自然な前傾姿勢となっています。長時間にわたるライディングの後でさえ快適性を損なわないように燃料タンクは入念に造形され薄いシートパッドは最高品質の衝撃吸収材で作られています。
スタイリングと仕上げ
ドゥカティのデザイナーは996Rの優れた技術的内容と性能を際立たせるために本質的なリファインされていない従来のスタイリングを選びました。カーボフェアリングを含む細部に及ぶハイテク素材の使用は優れた機能性を生み出しています。
より滑らかな、ほっそりした外観のフェアリングにするためエアーダクトは排除されました。これはCX値0.02を得たシャープな外観に現れています。
グラフィックは前モデルの996SPSから譲り受けメタリックグレーのフレームにマッチするメタリックシルバーのエンジンがスタイリッシュなタッチを加えています。